ちょっといっぷく 第17話

第17話 普賢噴火で得たもの

 

最近教育問題がかまびすしい。

「真の教育とは」と大上段に構えた議論は苦手だが、礼儀正しく、素直に感動し感銘を受けるとか、ささいな親切にも感謝する心を教え込むことが教育の基本ではなかろうか。これは教育の設備やシステムで解決出来る問題ではない。この心の問題は、平穏で豊か過ぎる社会では、ドンドン失われていく宿命にあるようだ。

島原地域においては、普賢噴火によって、今や忘れかけていた日本の美風、代償を求めない犠牲的精神、他人に対する思いやり、やさしさが一挙に結集された気がする。これは噴火という異常事態の中でよみがえった得難い収穫であった。

今回の島原商工会議所青年部及び深江町商工会青年部主催による『がまだす元気塾』は、そういう意味で、ささやかではあるが特筆すべき事績の一つである。

有珠山噴火によって避難を余儀なくされている虻田町洞爺湖温泉小学校生徒49名を招待し、島原・深江の子どもたちと心の交流を計ろうとの趣旨で4日間の日程でおこなわれた。

当方から生徒70名余、女性部・青年部のスタッフ60名ほか計192名、ホームステイを快く引き受けて下さった23軒の一般家庭のみなさま、青年部の中には、お盆前の稼ぎどきに、自分の仕事を犠牲にして奔走してくれた人もあり、そして沢山の方達の心暖まる献身的奉仕があって、極めて有意義に終了することができた。

8月6日のお別れパーティでの虻田町の先生やボランティアで参加された人達のスピーチは感動的であった。

先生の一人は、「子供達は引っ込み思案でしたが、今回の参加で物凄く積極的になりました。見て下さい。深江の子供さんと一緒に飛び入りで太鼓をたたいたり、舞台のうえで歌をうたうようになりました。」又、東京の小児科医師の上田明彦先生、千々石の養護学校勤務の岩永千草先生、この2人は青年部のホームページでこの企画を知り、自費で参加したという。上田先生は、東京~千歳・千歳~長崎・長崎~千歳と子供達と行動を共にし千歳から再び東京へ帰るというすべて自費での参加で子供達の健康管理の面倒をみてくださった。

岩永先生は、「ボランティアのみなさんや参加された子供さんから逆にエネルギーを頂きました」

実践的教育とは、こういうことの積み上げをいうのだろう。この感動と感謝の気持ちが、徐々に広がっていけば、日本はきっと再生出来る。

(島原商工会議所会頭)

 

2000年(平成12年)9月26日

 

次の記事

ちょっといっぷく 第18話