ちょっといっぷく 第29話
第29話 21世紀に残したいもの
余すところ数日で21世紀を迎える。
(社)日本広告業協会が20世紀を締めくくる特集として「21世紀に残したいもの、残したくないもの」を企画していた。
※「もったいない」という言葉は死語になってしまったのだろうか。以前は日常の会話によく出てきたと思うが、最近ではほとんど聞くことができない。モノを大切にするという気持ちを込めて、この言葉を残したい。
(株)博報堂・丸山
※残したいもの 戦後の混乱の中で懸命に生きてきた努力と、貧乏ながらも希望に満ちた精神。
※残したくないもの 世界を経済的にはキャッチアップし、抜き去ったかのようなゴーマンさと、インモラルで拝金主義の貧しい精神
電通・松崎
※残したいもの 約束を守り、礼節を重んじウソをつかず、カネで動かない、という台湾の日本精神。
※残したくないもの カラ念仏的平和論。人権運動。日本的個人主義。
(株)博報堂・山下
68のメッセージの中から5点だけ取り上げたが、「日本精神」がなんで台湾なのかちょっと気になった。
たまたまPHPの取締役本部長の谷口さんという人から台湾前総統李登輝氏の著書「台湾の主張」(平成11年度山本七平賞受賞)を贈っていただき一気に読み上げていたのでその意味が良く分かった。
李前総統は、旧制台北高等学校から京都帝国大学出身で昭和20年22歳まで日本籍であった。つまり日本の正統な教育を受けた方であり、教養もまた日本の伝統につながるものであった。日本人が失ったものを大切に身につけ、更に超えて台湾の指導者となり、「台湾の奇跡」を実現した人である。この本によって李前総統の人生哲学、政治哲学が集大成されている。
第6章いま日本に望むことの中では、日本の対外姿勢に対する率直な批判や、金融政策に関連、発想上の柔軟性について具体的な提案をしている。
政治家や官僚主義にも言及、特に政治家が「利害」によって判断する限り日本の政治に幅や大局観など生まれるはずはないと喝破、「大きく太く」ものごとを押さえる信念に裏打ちされた鍛錬を行えと手厳しい。
我々以上に日本を憂える至情に打たれる。日本よ、自信をもて、とつくづく思わずにはおれない。
来るべき21世紀は、残すべきものを大切に残し、残したくないものは勇気をもって捨て、底力のある未来にしたいものだ。
みなさん、良いお年を。
(島原商工会議所会頭)
2000年12月26日