ちょっといっぷく 第27話

第27話 アダム・スミスとケインズ

 

今年3月現在、わが国の借金は地方分も含めて600兆円を超える。その利子だけでも1分間で3,000万円、1時間で18億円も増え続けている。

こんな状態で日本の将来は、果たして大丈夫だろうかという不安がつきまとう。

文芸春秋新年特別号で日本銀行速水総裁は家計の金融資産残高について、6月末時点で1,300兆円(30年前は73兆円)、そして今もなお増え続けている。その内の753兆円は家計部門が金融機関に預けている分だという。その点アメリカでは個人の貯蓄はゼロ、3,000億ドル以上の経常赤字、日本は1,200億ドルもの黒字で、日本の対外債権は1兆ドル近い資産超過で世界最大の債権国だと説明していたが…。

細野真宏の書いた『経済のニュースが面白いほどわかる本』を読んだ。日本の経済について大変やさしく解説してあり分かりやすい。

その中のマーケットのメカニズムの話。

モノが必要以上に多いときには、値段はどんどん下がっていき、需要と供給のバランスがとれるまで値段は下がる。

みんなが自分の利益だけを考えて行動しても、(まるで神が市場を操っているかのように=神の見えざる手と表現した)市場の需要と供給のバランスは自然にとれていく。この理論が1776年「アダム・スミス」(英国経済学者)が発表した『国富論』である。つまりマーケットメカニズムとは、市場にまかせておけば需要と供給の関係が自然にうまく調整されていくことをいう。

今の世界経済でも、依然として重要な役割を演じている理論であるが、1929年ニューヨーク株式市場での株の大暴落、失業率が25%という事態で発生するに及んでこの理論も万能でないことが分かった。

1936年ケインズ(英国経済学者)が『一般理論』でこのことを指摘した。不況のときマーケットメカニズムにまかせて何もしなかったら景気は益々悪くなっていくので、政府の力でなんとかすべき、と提言した。

具体的には「公共事業」という形で政府が仕事を増やすことによって、雇用を増やして失業者を減らしたり、「減税」をやって景気を良くし失業者を減らすべきという内容のもの。「公共事業」や「減税」という考え方はケインズが考えたもので、このケインズの理論は、いまでも景気対策の主流になっている。

日本も例外ではないが、従来型の「公共事業」は無駄遣いに終わったものもあり、国の借金が増えた原因になっている。

景気を良くするためには、将来に亘って経済効果が見込める「情報・通信インフラ」などにお金を使うべきだった。

(島原商工会議所会頭)

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