ちょっといっぷく 第26話

第26話 「駅伝」で思うこと

 

来る12月9日(土)第18回九州学生駅伝対校選手権大会が当地島原半島で開催される。

島原文化会館前をスタート、口之津・加津佐を経て、小浜町から雲仙経由、再び島原文化会館までの94.5kmの8区間を九州26大学の若人が駆け抜ける学生駅伝である。

本大会は雲仙普賢岳災害からの復興を記念して行われるもので、九州8県でテレビ放送が予定されている。選手諸君の健闘を期待したいが、北九州大学の松尾聡子さんは、同大初の女性応援団長として島原駅伝に出場するそうで、こちらも楽しみの一つである。

第49回九州一周駅伝で長崎は3位に入賞した。

森勇気(コマツ電子金属)、阿部祐樹(三菱重工)の健闘が光るが、ゴールテープを切った土肥正幸主将は、浦上駅前交番のお巡りさん。開会式で選手宣誓をしていた人である。万年8位が40年ぶりに3位に躍進したのだから長崎県にとってはまさに快挙である。

その他全国女子駅伝や、全九州高校駅伝など長崎県勢の健闘ぶりが伝えられている。

駅伝がなぜかくも日本人にうけるのであろうか。

駅伝はタスキだけのシンプルなルールだ。中継点で「後は頼むぞ」と倒れ込むようにタスキを渡し、「よし、まかせろ」と勢い良く走り出す。走者からほとばしる感情が声援する人々をとらえてやまない。こういうことが日本人の心情に合致しているのだろう。

旧聞に属するが、今春の箱根駅伝は、中央大学が6連覇という輝かしい金字塔を打ち建てたのであるが、1区走者の栗原選手が難所の六郷橋にさしかかり、かなり疲れていた時に、西内監督が叫んだ。「2区の二宮を楽にしてやれ」と叱咤されて、がんばったという話がテレビで報道された。

つまり自分のためにではなく己を棄てて仲間を楽にしてやるためにがんばるというこの思いやりの気持ちが1本のタスキにこめられている。

中大の高木総長は、このことについて、「すべてを自分個人の利害得失や金銭の尺度でしか測ろうとしない現今の風潮の中で、自分が辛くても仲間を楽にさせたいというこの思いやりの心情ほど尊く美しいものはない」と絶賛していたが、我々も同感である。

跂(き)する者は立たず、跨(こ)する者は行かず(老子)

背伸びする者は長い間立っていられない。大股で急ぐ者は結局は疲れて進まない。急がばまわれ、大事だからこそ油断することなく急がずに進むことが肝要だと教えている。

秋は駅伝とともに、数々のドラマや教訓を残しつつ深まっていく。

(島原商工会議所会頭)

 

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