ちょっといっぷく 第20話
第20話 「すべて無し」と思えば
文芸春秋の臨時増刊号「私たちが生きた20世紀」の中で共感する話が載っていた。
イトーヨーカドー・グループ名誉会長伊藤雅俊氏の『「すべて無し」と思えば、有り難い』の一文である。要点を抜粋すると、
最近は、顧客満足度を高めようと、コンピューターを利用して、顧客情報データベースを構築することがはやっている。しかし、思い出していただきたい。どの企業でも、創業当時は、どうやったらお客さまがきてくださるか、商品を買ってくださるか、お客さまは何を望んでいるのか、という顧客中心の思考をしていた筈である。基本はお客さまであり、お客さまとの長期にわたる良好な関係づくりこそが企業成長の源泉である。
もともと私どもでは、商いを始めるとき、「お客さまは来てくれないもの」「取引をしたくとも、お取引先は簡単に応じてくださらないもの」、そして「銀行はお金を貸してくださらないもの」という『ないない』尽くしから出発した。『ある』ことを前提にせず、『ない』ことを前提にするからこそ、来てくださったお客さまに、取引に応じてくださる取引先に、お金を貸してくださった銀行に、有り難いという感謝の気持ちが生まれる。
お客さまが来るのは当たり前、そう思った時、人は傲慢になり、お客さまの心は離れていく。(中略)
さて、21世紀は、間違いなく市場経済の世界になるだろう。世の中が認めてくれなければ商品は売れない。これだけコストがかかったのだから、これだけのお金はもらいたいという。これはとんでもない考え違い。市場経済というのは、言い換えれば、お客さまの立場になって考えるということ。お客さまが認めないものが売れるわけがない。21世紀になっても、商いの基本は変わらない、と私は思う。
グループ全体で年間5兆円の売り上げがあり、勝ち組の筆頭として突っ走っている企業の会長の言だけに説得力がある。
※不況のときこそ、店頭に3倍の笑顔を…
※スマイル イズ フリー 笑顔はただ
※給料は会社からではなくお客さまからいただくのだ
※小売業の成功する秘訣は、もう一度来たいと思うような店をつくること
※創業は易く守成は難し
(貞観政要)
(島原商工会議所会頭)
2000年(平成12年)10月11日