ちょっといっぷく 第21話

第21話 「IT」とは何者ぞ

 

臨時国会で森首相の所信表明演説があった。

IT国家戦略・IT基本法案・日本型IT社会・IT普及国民運動等々、ITという言葉の乱発が続いた。一体ITとは何だろうか。

先日、島原電信電話ユーザ協会では、定期総会終了後、東洋大学松原教授のご講演をいただいた。

先生は、IT分野で活躍されている新進気鋭の学者で、IT革命の現状や将来について大変分かりやすい説明をされ、聴衆は多くの感銘を受けたようだ。

我々もカタカナ語や横文字が多く苦手の分野であるが、世界の大勢に遅れないよう、まずは常識程度の知識は持っておく必要があると思われる。

松原先生の講演内容や著書などを参考にごく初歩的なおさらいをしてみよう。

Iはインフォメーション(情報)、Tはテクノロジー(技術)の略で、9割方インターネット・テクノロジーと呼んで良いのではないかと先生は言う。

それが何故、これ程大騒ぎになるのであろうか。

森首相の言葉を借りるまでもなくIT(情報技術)が今からの時代の柱の一つになるであろうことは万人が認めている。

1760年イギリスで始まった綿織物の自動化という技術革新が、当時の社会構造を根本的に一変させたいわゆる『産業革命』以後240年ぶりの革命になるだろうといわれる。

パソコン(パーソナル・コンピュータ、個人や家庭での利用を目的とした小型コンピュータ)どうしを接続することは簡単にはできなかった。それを可能にした世界共通語が確立され、世界中のコンピュータが繋がった。

つまり、インターネットの出現である。

コンピュータの高性能化・低価格化と通信の大容量化・高速化が進むことで、企業・家庭へ普及しだした。結果情報の社会資本が広がっていく。

企業間・企業対個人間の取り引きの電子化が進み、企業・個人向けの新しい情報サービスが誕生することになる。

1980年代までは、経済面で日本はアメリカを圧倒的にリードしていた。それが90年代にはいって逆転、この大きな原因の一つが、日本でIT革命が遅れたことだという。

アメリカでは、IT関連産業が経済成長の3分の1を担うようになった。99年上半期では、アメリカ全体の設備投資の4割を、IT産業が占める。まさにIT革命がアメリカの経済を引っ張っている。アメリカでパソコンとカラーテレビの台数が逆転したのは96年であった。日本でもパソコンの販売台数は年間1,000万台を突破、携帯電話は年々1,000万台ずつ増え続け、固定電話を超えて6,000万台に迫る勢い。

ITで日本は、アメリカに5年以上の遅れをとったといわれるが、日本では携帯電話が情報端末として、インターネットに接続されるようになった。またソニーの「PS2」のゲーム機が低価格3万円でしかも通信への拡張性も備えているところから、新たな家庭の情報端末となる可能性が高い。

これらの非パソコン分野で日本がアメリカを再逆転する可能性があるといわれている。

―つづく―

(島原商工会議所会頭)

 

2000年(平成12年)10月31日

 

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