ちょっといっぷく 第46話
第46話 結婚スピーチ
今月の佳日、親和銀行松浦頭取の媒酌で、金子知事の甥ごさんの結婚披露宴があり招かれた。来賓の挨拶は、野崎長崎商工会議所会頭ひとり(宴の途中で市川森一氏のスピーチがあったが)という誠にシンプルな式次第で好感がもてた。
野崎会頭は、十八銀行支店長仲間で、おしゃべりは余り上手でない(おっと失礼)と聞かされていたが、本当は逆でユーモアがあり、心のこもった話し振りであった。要旨は、夫婦が生活していくためには努力が必要であること、そして寛容の精神が必要だと諭された。その中の一節「自分は結婚して48年になる。今日家内も同席しており、本人を前に言いにくいが、ずーっと寛容の精神で許してきた」と述べて会場を笑わせた。
『結婚するまでは両眼をしっかり開いて、結婚したあとは片目をつぶって』という有名な西洋の諺を引用されたが、この語源について発言者の名前まで披露されたのには、さすが東大出身と感心した。
結婚スピーチにはユーモアが必要なのだろう。次は小輩の挨拶から、「みなさんご記憶の事と思いますが、昔褒め殺しというのがありました。知人に言わせますと夫婦の場合、お互いに褒めて褒めまくれというんです。主人が嫁さんに向かって「いやぁ今日はとてもキレイだよ」とささやきますと嫁さんは「あんたなんば言うとね」とてれながらも内心は満更でもないのであります。ひょっとすればでなく、自分は本当にキレイなんだと信じこむようになって、不思議にも本当にキレイになるそうであります。
「今日のおかずはうまかばい」と褒めれば嫁さんは、せっせとご主人のために一生懸命うまい料理を作るというわけであります。
こうなると、嫁さんもさるもので、「あんた手先が器用かもんね」等といわれようものなら、玄関の扉の修繕から、かつお節のかんなかけ、らっきょうの皮剥きまで手伝うということになるわけであります。
考えてみますと、夫婦はもともと他人であるわけですから、言葉にだして褒め合うことが大切であります」。
ある披露宴で友人がスピーチを求められた。酒の酔いもあって、頭の中が一瞬真っ白になったのだろう、暫く絶句、言葉がでない。周囲がシーンと静まる。彼氏「人生は…」用意してきたせりふを忘れたのか、みんなが心配そうに次のことばを待つ。ややあって「人生は感激と色気ぞ!しっかりやれ。以上終り」とやった。暫くして万雷の拍手が沸き起こった。
彼のスピーチが最も雄弁だったのかもしれない。
(島原商工会議所会頭)