ちょっといっぷく 第14話
第14話 商人(あきんど)=永六輔の世界
たかだか180頁余の小冊子だが、なかなか示唆に富む言葉が詰まっている。
役に立ちそうなものを拾ってみる。
※客が買う気になる値段で、こっちが儲かる値段。これを決めるのが商売のコツなんだ。※宣伝はお客様のして下さるもので、自分でするものじゃありません。※安売りをして儲かるってことは安売りじゃないってこと。※現金、それも前金でという店には、信楽焼の狸が置いてある。あの狸は、堂々と、〔前〕に〔金〕玉を下げて前金を要求しているのだ。※家の近所の〔山本かつら店〕が、最近〔日本ヘアシステム〕って店になったの。そしたら、流行(はや)っちゃって、大変。※町内の〔木村タクシー〕が〔キムタク〕って看板を出したら仕事が増えた。※銀行の窓口で、「すみません。公的資金投入の申込書をください」窓口も立派「ちょっと、お待ちください。探してみます」※老舗とは、長い歴史を生き残ってきたというのは、新しいから、時代の先端にいたから老舗になれた。※商店街はもっと町のかたち、町の文化というものを大事にしようとしなければいけなかった。
民族とか、文化とかは、風雨にさらされて無くなるというものではない。戦後53年の歴史で見失ったものこそ、日本独自の思考であり生きる知恵、見失っただけ、再びみつければ良い。※生き方も変わり、暮らし方も変わった以上、商店街も変らないわけにはいきません。
※文化を支えるのは商店街、巨大なるショッピング・センターは「文明」を支える。
当方のつぶやき…『中学一年の時、文化と文明はどう違うか、答えろといわれたのを思い出したが、この年になってその答えを出そうとは…』
父におむつが必要になったので、商店街の薬局へ買いに行った。薬局のご主人が、父の体格にあわせたおむつを選んでくださり、介護の相談から「ときどきグチをこぼしにいらっしゃい」。自分の町の商店街の薬局がこんなにありがたいところとは思わなかった。
もっと実践に役立つ話はないかと期待に胸ふくらませて一気に読んだ。結果は隔靴掻痒の感で終わったが、無理もない。640円の本で商売の極意が分かる程、商売は易しくない。
自分で考え実践して掴むべきもの。さあ元気を出して新しい商店街を育てよう。
(島原商工会議所会頭)
2000年(平成12年)8月29日