ちょっといっぷく 第9話
第9話 老人のたわごと(干拓の松原)
諫早湾の国営干拓事業が費用対効果や一部政党の反対発言でもめている。
事業の完成までに2,500億円を投ずるという。既にあれだけ出来上がったものを今更白紙撤回など出来る筈はない。要は自然と調和し共存する環境をつくりあげる方法を考えるべきだろう。
後背地の山林の植生を豊かにし、水辺の生態の回復や生活排水の徹底した再利用、堤防や海岸線はコンクリート等で護岸化せず、自然石を手作業で積み上げ、自然の生態系をできる限り守り、自然をはぐくむことに成功した池田武邦・現ハウステンボス会長の壮大な挑戦実績は、参考にならないか。
生活排水は高度処理を施した上、余剰水はバクテリアによる土壌浄化を行い、一滴も海に流してない。それにより埋め立てにより一時汚染された海は、いま、昔の状態に回復しているという。
今、建築廃材を使った木炭が作られているが、濾過剤としての利用方法はないものか、コスト的にも相当安く仕上がると思うのだが。
この前、県知事との懇談会の席上、知事から環境問題は今後益々重要となる。環境に配慮した諫早干拓の活用方法を考えたらと示唆があった。
潮受け堤防を一般道路として使用することが決まっているが、取り付け部分を含めると延長8.2km、片側一車線、幅員8mの車道と幅員3mの歩道を2003年度完成を目指すという。
平成10年福知山市友好親善訪問の旅の帰途京都府宮津湾の日本三景の一つと言われる『天の橋立』を観る機会があった。阿蘇海と宮津湾を締め切った延長3kmの白砂の松林である。
諫早の潮受け堤防を活用して松の植林を行えば、天の橋立の3倍近くのスケールとなり地域住民が環境問題に真剣に取り組む姿は、全国の範となり、周辺にマッチした景観とともに、修学旅行生や見学者に対し立派な観光資源となるに違いない。
自然と人間の調和を目指す豊かな心をとりもどそうという挑戦である。
(島原商工会議所会頭)
2000年(平成12年)7月25日