ちょっといっぷく 第97話

第97話 老婆(ば)は一日で成らず

 

イラク問題もさることながら、台風や地震が続き、一方の我々中小企業は不況の嵐からなかなか抜け出せず、天の試練はまだ続く。「ちょっといっぷく」も96回でいっぷくしたまま、アッという間に時が流れてしまった。

多くの読者から激励を受け、気にはなっておりました。毎週1回の寄稿は無理として、束縛されず自由な時間をいただいて再開したと思います。

今日の混沌の時代には『笑いとユーモア』が必要でしょう。

まずは落語の前座ならぬ寄稿文の前語りを一席。

あまり客の入っていない寄席での話。座布団をまくらに寝っ転がっている客もいる。前座をつとめる落語家の声がだんだん大きくなった。

「こんなに笑わない客の前で噺すおれの身にもなってみろ!」とほえた。すかさず客から声あり

「こんなに笑えない噺を聞かされる身にもなってみろ」突然立ち上がって拍手する奴がいて、しばらく絶句したという。私にとりまして、この話、大変参考になりますです。

だいぶ昔になりますが、イタリアのベスビオ火山を見学に行きました。ナポリのホテルで一人取り残され天涯孤独に身となり真っ青になったこと。家内とパリに行ったときは、間取りの複雑な、由緒ある大きなホテルに泊まって、家内がホテルの中で迷子になったこと等々、海外珍道中には数々の思い出があります。体験的に申し上げますと、言葉は通じなくてもなんとかなるもんですな。今日こうしてちゃんと島原に帰ってきて、当たり前の生活をしているのですから。

博多の西嶋さんの話はおもしろい。

フランスはアメリカと違ってホテルがオテルですし、水も「ウォーター」では通じません。水をフランス語で「オー」といい、暑いが「ショウ」だそうですから、「水をください暑い」は村田英雄の「王将(オーショウ)」でよかろうと、食堂で使ってみましたが、だめでした。

「わかりまっせん」がフランス語では「ジジ、ババ」に聞こえるので、首をすくめて両手を広げ「爺(じじ)、婆(ばあ)」と言ったら、これは通じました。アハハハ。

さて、文化的(?)笑いとユーモアのもっともたるものに『川柳』があります。

川柳とか俳句とかは、私にとりましては別世界の話で、全く知識はありません。ただ両方とも基本的に5・7・5。俳句が季語を重視しているのに対して、川柳は季節よりなにより専ら滑稽、諷刺に力点を置く。これは小沢昭一の説明であります。

そこで小沢昭一「川柳うきよ鏡」から秀作を3つ4つ選んでみた。

あの世とは 良いとこらしい 行ったきり

■あの世にも 粋(いき)な年増(としま)が いるかしら

三遊亭一朝(落語家)の辞世の句である。これはもう死に方の達人という他ない。この句につられ、間違っても、急いでいかないように注意して下さい。

ケイタイを 柩に入れる 万が一

「ご臨終です」と医者から宣告されたあと、生き返った50代の女性がいる。ケイタイをいれておけば「もしもし、わたし、生きてんのよ」まさか。

これでもう 二度とは乗らぬ 霊柩車

やっとおだぶつになりました。これでもう西の方へ行ったきり。一生に一度のドライブです。いろいろありましたが、長い人生、ご苦労様でした。

どういうわけか、人生の終末の話ばかりになりましたが、最後のとどめの一発を。

女房の 尻を輪ゴムの 的にする

輪ゴムを指にかけてピストルよろしく飛ばす。

あれ、女房の尻につい当てたくなるのは、的がでかくて命中しやすいためか。それとも、かねてよりニクラシイと思っているせいか、いや。愛妻へのごくマイルドなサディズムなのか。ま、どうでもいいけど。

私の女房みたいに、くたびれ果てたお尻は、狙い撃ちする興味も湧きませんが、これが女性の耳に入りますと『老婆は一日で成らず』無惨なお尻はあなたのせい、と開き直られるのがオチでしょう。

『ローマは一日にしてならず』に代わる井上靖のジョークです。

がまだす駐車場に足湯ができた。足湯は英語で フット バス と言うのだそうだ。天野祐吉(コラムニスト・童話作家)さんの話に、やまぐちたかお君という6歳の男の子の、足湯風景をうたった俳句にいたく感動したことがある。

あしゆする ぼくを見ている チューリップ

四季折々の花のある足湯は結構ですな。ついでに、足湯から見えるところに街頭を建てるんです。それもただの街頭ではない。頂部の照明には、大きな笠をかけてある。そして、それを支える柱が、すこし傾いている。

柱の傾斜角は三度、三度傾いた街頭が笠をかぶっている。だから、名前は「ゆとろぎ足湯三度笠」。

これは石井和紘氏(建築家)のアイデアを拝借した。見本は東京・赤坂にあるそうな。

話題性があれば人が集まる。人が集まれば笑顔が生まれる

私は、合羽からげた三度笠の「姫松屋の英ちゃん」の旅姿を思い出し、ひとり悦にはいっているのであります。

以上

2004年11月6日