ちょっといっぷく 第45話

第45話 平成の奇兵隊

 

4月26日、小泉内閣が発足した。従来の派閥重視の順送りでなく、適材適所を念頭に小泉首相が意中の人に自分で電話してくどいたらしい。特徴は女性が田中外務大臣をはじめ5人、民間から3名、40歳前半代が2人、派閥を完全に無視した驚天動地の人事である。

これに対する国民の反応はどうなのか。28日朝「8時、桂文珍のウェークアップ!」(長崎国際テレビ・NIB)でこれを取り上げていた。小泉内閣支持率が細川・橋本を抜いて86%という、今までの常識をくつがえす革命的数字でみんなびっくりしたと話していた。その席上、出演者のひとり舛添要一(国際政治学者)が、これは高杉晋作の奇兵隊の再来だと叫んでいた。

吉田松陰の松下村塾の志士たちに、高杉晋作・久坂玄瑞・山県有朋・伊藤博文・品川弥二郎等々そうそうたる顔ぶれがあったが、中でも高杉と久坂は双璧といわれた俊秀であった。吉田松陰によって彼等は、時勢の眼を開かれ、明治維新の大業に捨て身の働きをしたのである。

奇兵隊とは、幕末に長州藩士高杉晋作が、最下層の武士を中心に、農民、町人を含めて構成した非正規軍で、長州征伐の幕府軍を潰敗させ、明治維新実現に貢献した。

舛添氏は、今回の内閣人事が、民間人や力量未知数の若者をそろえたことで奇兵隊の出現と思ったのかもしれない。同時に明治維新という回天の大偉業へと連想したのだろうか。

政治がこれほど身近な存在となったのは珍しい。孫文のことばに『民意によって国を建て、民意に逆らって国を亡ぼす』とあり、さらには紀元前4~3世紀に生きた『荀子』は、「衆を得れば天を動かす」と喝破している。では衆を得てなにをなすべきか。

世論調査で新内閣に期待することは、まず景気対策、つぎに金融機関の不良債権処理や経済構造改革、そして財政再建とでてくる。実現の道はいずれも険しいと思うが、新内閣がこれを実行して改革を断行せよということだろう。奇兵隊よ、突撃せよだ。

国民にわかるように一つでも、形にあらわれれば国民は「おお、やる気だな」と支持が得られる。アメリカのブッシュは、狙いを絞り一発一発を確実に当てていくライフル型といわれる。(対するクリントンは、弾を何発も撃とうとするショットガン型だった)

永田町の論理とやらで、実現に困難がともなうかもしれぬが、これだけ大衆の味方があるわけだし、逆に阻害者をこちらになびかせ全国民が心をひとつにすれば、この国難は乗り切れる。そうでなければ日本国自体が破滅へと向かうだろう。ラストチャンスかもしれない。

改革には当然痛みがともなう。経済財政大臣の竹中平蔵氏は、就任の挨拶でウォームハート・クールヘッドでいくと訴えていたが、まさしく心はあたたかく、頭脳は冷静に、の精神は改革断行の基本であり、企業経営の要諦でもある。

(島原商工会議所会頭)

前の記事

ちょっといっぷく 第44話