ちょっといっぷく 第38話

第38話 天網恢々(てんもうかいかい)疏(そ)にして漏らさず(老子)

 

天の法網は広大で目は粗いが、しかしそれでいて、どんな小悪でも見逃すことなく、補足してしまう。世間の法網を巧みにくぐり抜けることはできても、天の法網を免れることはできないという意味である。

参議院のドンとして隠然たる力を持っていた村上前議員の証人喚問をテレビで見た。

想像していたとおり、真相解明には程遠い答弁の繰り返しであったが、そもそも国会における証人は、当事者本人であり、憲法のからみもあって、何回証人喚問を試みても結局今度のような結末が限度であろう。犯罪の事実究明は検察の仕事である。

自民党の参院比例代表選が膨大な党員獲得数と金集めで順位を決めるやり方から脱却して、例えば能力で順位を決めるとか構造的な転換をすべきではないか。

この問題は、単に自民党だけの問題ではなく日本全体の仕組みや慣習に問題がある。政治を含めた国全体の構造改革をやらないと、同じことを又2、3年ごとに繰り返すことになる。国民が目覚めなければいけない。

村上氏は、自己の権力欲に溺れて天の道を忘れたのだろうか。「欲深き人の心を降る雪は、積もるにつれて道を忘れる」という警世のことばがある。或いは自分の力を過信して悪事がバレる筈はない、バレても自分の力でどうでもなると思っていたのだろうか。

しかし天は決して見逃しはしなかった。

さて、刑務所の中でのセレモニーを何かの本で読んだことがある。

刑務所の看守は、懲役者に屈辱を与えながら虚脱状態にしてコントロールしようとする。これが伝統的な芸なのだ。田中角栄がロッキード事件で小菅刑務所に落ちた時に、最初の身体検査で痔の検査をされて、とたんにシュンとしたという。あの人は2度目だったが、それでもやっぱりこたえた。

とにかく最初に四ツん這いにされて、痔の検査と検便でガラス棒を突っ込まれる。これでみんな参ってしまう。このお尻の検査で、みんな脱力してしまうのだそうだ。それが彼等のオープニングブロー、看守術だ。なにせ銭形平次の小伝馬町のころからやっている世界に冠たる技術なのだそうだ。

このやり方は、今も続いているのかどうか知る由もないが、それはさておき、検察がしっかりせんと日本は決して良くはならない。

(島原商工会議所会頭)

前の記事

ちょっといっぷく 第37話

次の記事

ちょっといっぷく 第39話