ちょっといっぷく 第37話

第37話 「アルカス」落成

 

県と佐世保市が建設した総合文化施設「アルカスSASEBO」の落成記念式典に参加した。

アルカスとはギリシャ神話の母と子の物語に出てくる名前だそうだ。大編成のオーケストラやオペラから能まで鑑賞でき、大小の会議室などを備え、総工費約152億円をかけて完成させた。落成式は、文化活動の拠点ともいわれるだけあって、音楽主体のセレモニーで幕開けした。

ヘンデルの軽快な「水上の音楽」に始まり華麗で荘厳、聞く人を酔わせるウインナ・ワルツを世界中に流行らせた張本人、ヨハン・シュトラウスの「皇帝円舞曲」が続く。

「皇帝円舞曲」は、「美しく青きドナウ」「ウィーンの森の物語」などと共に、シュトラウスの数ある名曲の中でも最高の傑作といわれる。

話は変わるが、ウィーンから西ドイツのフランクフルトへ汽車が走っている。立派な新幹線並みの大列車だが、その列車に「ヨハン・シュトラウス号」というのがあるそうだ。日本も「ひかり」や「こだま」でなく、「赤とんぼ」とか「からたちの花」、「夕やけこやけ」なんて歌の名をつけてくれれば楽しいのだが…とは、山本直純氏の意見である。

シーサイドオーケストラ(佐世保市民管弦楽団を中心に、この日のために編成された祝祭管弦楽団)の演奏、団伊玖磨の指揮で心から陶酔した。

島原出身の前田拓郎君のピアノ演奏もあったが、最後の圧巻は、藤浦洸作詞・作曲者団伊玖磨指揮による交響詩『西海賛歌』であったろう。

360名に及ぶ長崎県合唱連盟のみなさんの海鳴りのような歌声は、聞く人の魂をゆさぶった。

丁度1年前、長崎のブリックホールで陸海空自衛隊による合同コンサートに招待されたことがある。

指揮者を除いて188名の大演奏会であった。鍛え抜かれた正にプロの集団であり、感動的であったが、特に最後の陸海空合同演奏によるチャイコフスキー作曲祝典序曲『一八一二年』作品49は、地の底から沸き上がる怒濤のような力強さを感じ勇気がでた。

この音楽は、ロシア遠征に向かったナポレオンが冬将軍のため大敗北、この歴史的事件を音楽で壮大に描いた作品である。両軍の戦闘場面では大砲の音が盛大に鳴り響きロシア軍が勝利すると、祝賀の鐘が鳴り渡り祝砲が轟くフィナーレというしろもの。

島原半島も1市16町が一つになれば、こういう音楽の殿堂実現も可能だし、素晴らしい生の音楽や文化に接することが出来ると思うのだが…。

(島原商工会議所会頭)

2001年(平成13年)3月6日

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